Heritage - 技術史
1989年 楕円ピストン

神保 武男さん


HONDAは2ストローク全盛のレース(GP500)に4ストロークで勝とうという事で楕円ピストンの開発が始まりました。その後その市販モデルのNR750のピストンがHFの試作に手配がかかりました。
楕円形状にもかかわらず、外径には条痕を付けたいという事でサイドカッターを高速で回し、外周に溝を刻んでいくという方法を取りました。当時の試作はそんな加工が出来る設備を持っておらず、型設のマシニングセンターや外作の試作加工メーカーのマシニングセンターを使い加工しました。 しかし精度の悪い設備を使うと軸の切り替えしで段差が出来、使い物にならず、また精度の良い設備でも1個加工するのに約2時間程度かかっていました。この加工時間ではとても量産出来ない為、HFと八千代工研で専用機を共同開発しました。またリング溝も楕円に加工する必要があり、しかも通常のピストンと同様上半角の指示があります。
最初は通常の板バイトを回転させて溝を加工しましたが、上半角が安定せず、バイトの剛性を上げる等の工夫等を行いなんとか図面を満足する物が出来ました。